「俺さ〜、数学得意だし大好きなんだけど
何でか国語の方が点数良いんだよね。
いつも語彙系しかやらないし。何でだろう。」
「読解は大丈夫じゃない?学校の教科書は
中受の国語のテキストより簡単だしね。
大学受験レベルの超長文で鍛えたし、語彙の
継続で良いんじゃない?理社はどう?」
「新たに内容増えてたのは、世界地理と
元素記号くらい。あとはほぼ中受と同じ。
公民も昨日、家用教科書フル読みしたら
殆ど同じだった。中受の時に猛烈に暗記した
日本国憲法のテキストも久々に出したよ。
授業はほぼ全部復習タイム。だからその分
かなり英語に費やしてる♪」
「社会の漢字解答ドリル懐かしいね(笑)」
「公民は漢字指定解答多かったもんな〜」
「あのドリル高値で取引されてるらしいよ。」
「マジで?スキャンしてUSBに入れてる?
たまにやりたいな(笑)」
「あるよ♪コアプラスも保管してある。」
「懐かし〜。さあ、今日もやるか〜!!」
除雪車が
農道をこじ開ける振動で目覚め
朝日を浴びて起床した。
中2修了式を終えて
今日から春休みのポン助の脳内では
再び受験生スイッチが入ったらしく
早朝から中学受験の時の話をしていた。
中学受験勉強の補助として使用した
市販の問題集は
中学生用が多く
高校受験でも使えるので
気に入ってやり込んだ問題集など
保管している物もある。
その間リニューアルされた物は
新訂版も購入してある。
逆に
中学受験用の問題集でも
高校受験に使える物もあるので
こちらも少し保管してある。
中学受験の国語に関しては
統計的に見ても
精神的に大人びた子が有利とされている。
しかし
体は大きいが
精神的な成長は人並みのポン助。
国語の勉強時間は
他の科目よりも明らかに少ないが
現在は得点源の1つだ。
小さな頃から体が弱く
外で遊べない時には
暗記する程本を読んだり
気に入ったDVDも
台詞を全て暗記して
アフレコしながら見ていたし(笑)
後はパズルやレゴで遊んでいた。
私は素人なので
良くわからないが
言葉を記憶するのは
確かに得意だった様に思う。
小学生になると
学級委員に推されても
(やらないでねと言う面倒くさい子が居たので)
本が好きで図書委員になったり
話すのが好きで放送委員になったり
自分のやりたい事に向かって
楽しく邁進する様になった。
漢字が楽しくて
学校で受けられる
漢検に挑戦して来た事も
語彙力を底上げした要因だろう。
常用漢字に困らない程度の
2級までは取得済なので
一旦終了している。
その先のクイズ王レベルの漢字は
もはや趣味の領域となり
受験には必要無いので
今は勉強時間を削ってまで
やる必要は無いと考えている。
クラスには
そういう知識をやたら誇示して
自分の優秀さを学校でアピールし
特にポン助や周りの友達を
直ぐに見下す子が居る。
幼い頃から賢く
地頭も良く努力もしているだろう。
親も人の上に立つ子にさせたくて
色々やらせて来たのかも知れない。
しかし現実は
皆を引っ張るどころか
直ぐに人を馬鹿にして怒らせては
その失言を“冗談だよ”と笑ったり
時には“本当の事だろ”と開き直ったりする。
従って結局誰も付いて行かない。
最近でも数人が
その子に言われた事に対して
ポン助の前で猛烈にキレていたらしい。
確かにポン助の時も
中受不合格を笑いながら
執拗に馬鹿にして来た時には
“だって本当の事だろ”と言われた。
そしてその時には
多くのクラスメイトが全力で怒り
ポン助を庇った。
小学校から情報は全て
中学校に共有されて来たので
先生は何もかも知っている。
日常的に
“自分以外みんな馬鹿ばっかり”
と言わんばかりの態度や言動の為
何か言われた子は
とりあえず揉めたく無いので
その場は堪えてやり過ごし
後から皆ポン助や友達や先生に愚痴る。
やはり陰では猛烈に皆に嫌われ
周りには誰も居なくなり
皆が体育館で遊んでいる時も
いつも教室に一人で居るらしい。
優しい子が気を遣って誘っても
嫌そうに断るので
誰も誘わなくなったとの事。
因みにその子は学年1位では無く
オール5でも生徒会長でも無いらしい。
そもそもそれに値する領域の子は
成績など関係無い次元で
人として周りを強力に惹き付ける魅力や
統率力や頼れるオーラを持ち
自分から優秀さを誇示せずとも認められ
皆に囲まれて群がられ推されて
自然に人がついて来るのだ。
「あんな寂しい学校生活、俺は絶対に嫌だ。」
「もう揉めないでね。」
「揉める程関わっていない。だって後輩にも
“どうせ俺は嫌われてるし”とか“俺は1人だし”
ってマイナス言葉を直ぐ言うから、みんな
呆れてる。何でそうなってるのかなんて
全く考えていない。俺は少しでも早くアイツと
離れたいよ。」
「そっか。ま、あと1年だ。頑張れ!」
「うん。あ〜考えたら色々腹立つから
こんな時は勉強するに限るゼ!!」
「あはは。頑張れ♪」
そう言ってまた
机に向かっていた。
休日の10時間超の勉強時間はもう
小学校高学年の時から継続している。
ただ闇雲に時間を消化するのでは無く
意識しているのは
何をどれだけやるか。
何をどれだけ覚えるか。
そして
圧倒的な演習量の継続。
各科目毎に
1冊を完璧に仕上げて
そこから2周目3周目と増やして行く。
小学校の最初の中学受験生時代に
当たり前にやって来た事を
更に進化させて
高校受験生になる。
いや
既にもうなっている。
いつも飄々とフザケて
周りと爆笑しているポン助だが
机に向かって居る時は
たまに鼻歌や独り言も聞こえて来るが
終わって部屋から出て来るまで
完全に集中しているので
至急の時以外は一切話し掛けられない。
この前は
ゲーム機の処分の準備をしていた。
進学時に持って行かないなら
封印するだけで良いのでは?と話し
従弟にソフトをあげて
喜ばれていた。
自ら決めて即行動
これがポン助スタイル。
「2度とあんな思いはしたくない。」
そうだよね。
不合格の烙印は
思い描いていた夢の全てを
一瞬でモノトーンの世界に変えた。
でも
そこからまた時間をかけて1色ずつ
明るい色を重ねて来た。
「置かれた場所で咲きなさい」
と言う言葉もあるが
その場所に色を付けるのも
何もかも失うのも
全ては自分次第。
ポン助のこれから歩む道が
更に鮮やかに色付く事だけを
切に祈りながら
到着したばかりの
新学年用のテキストの箱を開封した。